吐き気

急性胃炎・慢性胃炎

胃の中では通常、粘液の働きにより強力な酸をもつ胃液から胃粘膜を守っています。胃炎とは、粘液の働きが低下したり、暴飲暴食、刺激物の摂りすぎなどで胃酸の分泌量が増加したりして、胃粘膜が酸に耐えきれず炎症が起こる疾患です。胃の痛み、胸焼けやむかつき、みぞおち付近の痛み、下血、膨満感や腹部不快感といった症状が現れます。放っておくと胃粘膜の修復が追いつかず、胃液の分泌量が減少し、胃潰瘍へと進行する恐れもあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

主にみぞおち付近に痛みが生じることが多いですが、無症状のまま病状が進行するケースも珍しくありません。特徴として、食後に症状が強くなれば胃潰瘍、食前に症状が強くなれば十二指腸潰瘍である可能性が高いと考えられますが、確定診断を受けるためには医療機関にて内視鏡検査を受けなければなりません。

胃潰瘍について

十二指腸潰瘍について

胃がん

早期胃がんは無症状であることが多く、進行に伴い吐き気や腹痛といった症状が生じます。そのため、胃がんを早期発見・治療するためには定期的な胃カメラ検査の受診が必要です。早期胃がんのうちに治療を実施すれば、日常生活にも大きな支障をきたさずに完治を目指せます。また、ピロリ菌への感染も胃がんのリスクと関係していると考えられており、そのピロリ菌感染の有無も胃カメラ検査にて調べることが可能ですので、胃がん発症のリスクが高くなる40歳を過ぎたら、定期的な検査を受けるようにしましょう。

胃がんについて

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃液や胃の中の食べ物などが食道へと上がってくることで炎症となり、胸焼けなどの症状を引き起こします。胃粘膜は粘液の働きで胃酸から守られている一方、食道粘膜には酸を防御する働きがないため、逆流によって炎症が起きてしまうのです。薬物療法によって症状を緩和できますが、再発率も高く、生活習慣や食事の改善が治療の上では非常に大切になります。

逆流性食道炎について

感染性腸炎（出血性大腸炎/食中毒）

O-157、ノロウイルス、サルモネラ菌などのウイルス・細菌・寄生虫への感染が原因となり、激しい下痢や発熱、嘔吐、腹痛、悪心、血便などの症状が現れます。感染から発症まで時間を要するものもあり、食中毒を起こしていると患者様自身で気付けないケースも多くあります。対症療法によって症状を抑えるのが基本的な治療になりますが、市販の下痢止めの服用などは病原体の作り出す毒素の排出を逆に妨げてしまうということがあるため、必ず専門医の指示に従って治療を実施してください。

腸閉塞

大腸がんや手術後の癒着、腸重積（ちょうじゅうせき）などを原因として腸管が塞がってしまっている状態を腸閉塞といいます。便を排出できない状態となるほか、ひどい吐き気や嘔吐の症状が現れることが特徴です。治療のためには入院の措置が必要です。絶食の上で安静な状態を続け、多量のガスの滞留がみられる場合には鼻からチューブを挿入して状態を改善します。手術を必要とするケースもあります。

虫垂炎

一般的に「盲腸」と呼ばれている疾患です。虫垂炎特有の痛みやその発生場所などは特にないため、専門医による慎重な判断を必要とします。基本的には抗生物質の服用や点滴によって症状は改善しますが、手術が必要となるケースもあります。

腹膜炎

急性膵炎や、潰瘍による胃の穿孔などを原因として腹膜に炎症が生じている状態です。原因疾患に対する治療と、薬物療法により症状緩和を目指します。手術が必要となるケースもあります。

急性膵炎（すいえん）・慢性膵炎（すいえん）

膵臓は胃の後ろ側（背中側）にある臓器で、消化と血糖値を制御する大事な臓器です。そこに炎症が起きると、突如激しい痛みが生じます。過剰飲酒や胆石が発症原因となります。膵炎には急性膵炎と慢性膵炎の2種類があり、慢性膵炎は持続的に炎症が生じている状態です。病状が軽い場合は膵臓の腫れだけで症状が治まる場合もありますが、中には多臓器不全を起こし命に関わる場合もあります。ダメージを受けた膵臓から消化酵素が漏れ出て、組織を溶かしてしまうことで他の臓器を傷つけてしまうのです。早期発見・早期治療が大変重要な疾患です。

急性肝炎

一般的にはB型肝炎やC型肝炎と呼ばれており、ウイルスへの感染を原因として全身倦怠感、黄疸、食欲不振などの症状が現れます。現在は適切な治療を実施して安静にしていれば、症状が緩和されるケースが大半ですが、稀に劇症肝炎に繋がる恐れもあります。

胆石症・胆のう炎

胆石とは胆汁の成分やコレステロールなどが塊になっているもので、これが胆のうや胆管に生じるのが胆石症です。胆石症の基本的な治療には、手術が必要になります。また、胆石症が胆のう炎に繋がるケースもよくあり、激しい腹痛、黄疸、発熱などの症状が現れます。胆のう炎は、鎮痛剤の服用や抗生物質の点滴により症状を抑えることが可能です。

尿路結石

腎臓でできた結石が尿路（腎臓・尿管・膀胱・尿道）の中で詰まると、背中から腰にかけて突如激しい痛みが生じ、それに伴い吐き気・嘔吐の症状が現れます。その非常に強い痛みから、救急外来を利用する患者様が多いです。
小さな結石であれば、十分な水分の摂取や薬物療法、運動などで自然に石を体外へ出すことができますが、大きな結石は手術によって砕く必要があります。 治療後も、再発を防ぐために食事を結石が発生しにくい内容に見直すなどの対策が必要です。

クモ膜下出血

脳静脈瘤の破裂などを原因としたクモ膜下出血は、突如として激しい頭痛、吐き気、嘔吐を引き起こします。頭痛より吐き気の症状が強く出るケースもあります。緊急性の高い疾患ですので、ただちに医療機関を受診してください。

緑内障

突如として起こる激しい頭痛や吐き気、嘔吐といった症状はクモ膜下出血に典型的な症状ですが、中には緑内障を原因としているケースもあります。眼圧（眼を丸い形に維持している力）の急激な上昇が発症原因となります。緑内障は失明のリスクもある大変危険な疾患ですので、内科や脳神経科などを受診したら、そこで眼圧も測ってもらうようにしましょう。

脳腫瘍

腫瘍が生じて脳が圧迫されると、頭痛、物が二重に見える、吐き気がするといった症状が現れます。

片頭痛

前兆があった後、激しい頭痛とそれに伴う吐き気の症状が現れます。症状は数日間継続することもあり、さらに吐き気の症状によりお薬を飲むのが困難になると、症状がなかなか緩和せず長期化してしまうことがあります。片頭痛でお困りの方は、専門医に相談してご自身に合ったお薬を処方してもらいましょう。症状が出始めたら、悪化する前にそのお薬を飲んで早めに症状を緩和できるようにしておくのがお勧めです。

脳出血

吐き気・嘔吐・めまいといった症状が生じます。特に小脳において出血が起こると、小脳の持つ平衡感覚の維持機能に異常が生じ、吐き気やめまいといった症状が生じやすくなります。

脳震盪

事故やスポーツなどで脳が激しい衝撃を受けると発症します。吐き気・嘔吐・めまいといった症状が生じますので、症状が完治するまで必ず安静にしてください。

髄膜炎

ウイルスや細菌への感染やお薬の副作用を原因として、脳や脊髄を覆っている保護膜に炎症が発生している状態です。吐き気、激しい頭痛、けいれん、発熱といった症状が現れます。初めは風邪に似た症状なのが数日経つと悪化し、時には死の危険性もある恐ろしい疾患ですので、早急に医療機関を受診してください。

心筋梗塞

動脈硬化を原因とし、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が塞がれてしまう疾患です。胸痛が特徴的な症状ですので、吐き気や嘔吐とともに胸痛を感じたら心筋梗塞が疑われます。ただし、軽い吐き気の症状だけのケースもあり、注意が必要です。速やかに治療をしないと最悪の場合死に至る危険性がありますので、ただちに医療機関にかかってください。

糖尿病

糖尿病が重篤な状態になると、糖尿病性ケトアシドーシスという血液の酸性度が上昇する合併症を発症し、脳や神経に異常が生じることで吐き気、疲労感、意識レベルの低下などの症状が引き起こされます。非常に緊急性の高い状態なので、糖尿病の患者様で吐き気などの症状を感じたら、早急に医療機関を受診してください。ソフトドリンクケトーシスという、糖分の多い飲み物による急激な発症ケースもありますので、日々の生活の中でも注意するようにしましょう。

メニエール病

耳は聴覚だけではなく、平衡感覚をコントロールする役割を持っています。内耳に異常が発生し平衡感覚が崩れると、強いめまいや吐き気、耳鳴り、難聴といった症状が現れます。これがメニエール病です。めまいは目が回る感じを覚えるため、眼科にかかる方もいますが、メニエール病のような平衡感覚の乱れを原因としためまいの場合、正しくは耳鼻咽喉科を受診してください。

お薬の副作用

お薬の副作用による吐き気はよくあるケースの一つです。お薬に対するアレルギー反応が吐き気の原因となっているケースもあります。お薬により吐き気の副作用が起こったら、すぐに服用を中止し、主治医に他のお薬の処方などを相談してください。

心因性嘔吐

ストレスを原因として吐き気や嘔吐の症状が現れることもあります。拒食症や過食症による嘔吐もその一つです。医療機関では、まず吐き気や嘔吐の原因疾患の有無を確認し、疾患を原因としない場合はストレスによる影響の可能性を考えます。症状緩和のために、積極的に専門医に相談するようにしてください。

妊娠時のつわり

女性の場合、吐き気や嘔吐の原因に妊娠の可能性がないか確認しなくてはなりません。妊娠中には検査や治療に制限がかかる一方、患者様自身が妊娠の自覚がない可能性がありますので、丁寧な問診が必要となります。